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Case 01 今日の飯、どうする?(3/3)

ผู้เขียน: Amy
last update วันที่เผยแพร่: 2026-09-26 08:50:54

夫が目を覚ますと、体が燃えるように熱かった。

体温計を脇から抜く。

39.2℃

「うわ……最悪」

妻はいない。

娘もいない。

テーブルの上にメモが置いてあった。

買い物に行ってきます。寝ててね。

いい妻だ。

夫はそう思った。

喉が渇いた。

「水……」

冷蔵庫まで行くのが面倒だ。

いつもなら妻に、

「水取って」

と言えば済む。

だが今日は誰もいない。

仕方なく体を起こした。

その瞬間。

ピンポーン。

インターホンが鳴る。

宅配便だった。

荷物を受け取り、ようやく寝室へ戻ろうとする。

今度はスマートフォン。

娘の学校からだ。

『来週の持ち物について――』

知らない。

妻に聞けばいい。

そう思った瞬間、洗濯機が鳴った。

ピー。

ピー。

ピー。

「何だよ……」

止めに行く。

今度は炊飯器。

ピーピー。

食洗機。

ピピピ。

給湯器まで、

『お風呂が沸きました』

と喋り始めた。

「知らねえよ!」

夫が叫ぶ。

突然、家中が静かになった。

リビングの床に、白い紙が1枚落ちている。

では、本日の夕飯を決めてください。

「……は?」

玄関のドアが開いた。

見知らぬ男が1人入ってきた。

「今日の飯、何?」

「誰だよ!」

男は答えない。

その後ろから、また男。

「俺、何でもいいよ」

3人目。

「何でもいいけど魚は嫌」

4人目。

「昨日カレーだったから、それ以外」

5人目。

「簡単なのでいいよ」

「ちょっと待て!」

男たちは増えていく。

10人。

20人。

50人。

100人。

全員が夫を見る。

「今日の飯どうする?」

「何食う?」

「俺、何でもいい」

「でもそれは嫌」

「簡単なのでいい」

「腹減った」

夫は頭を抱えた。

「自分で考えろよ!」

その瞬間。

100人の男たちが、ぴたりと黙った。

全員が同じ角度で首を傾げる。

「え?」

「……」

「それ、誰の仕事?」

夫の背中を冷たい汗が流れた。

逃げる。

キッチンへ飛び込む。

冷蔵庫を開ける。

食材はある。

キャベツ。

豚肉。

卵。

豆腐。

人参。

冷凍したひき肉。

ちゃんとある。

でも――

何を作ればいいのか分からない。

夫はスマートフォンを手に取った。

妻へ電話する。

プルルル。

プルルル。

「もしもし!」

『どうしたの?』

「今日、飯どうする?」

沈黙。

『あなたが決めて』

「俺、熱あるんだけど!」

『知ってるよ』

「39度2分!」

『うん』

「具合悪いんだって!」

妻が静かに答えた。

『だから?』

「……え?」

『昨日、私も39度2分だったけど』

電話が切れた。

ツーツーツー。

夫は動けなかった。

冷蔵庫の冷気だけが顔に当たる。

その奥から声がした。

「なあ」

「……誰?」

冷蔵庫だった。

「今日の飯どうする?」

「お前まで?」

電子レンジが言う。

「俺、何でもいいよ」

炊飯器。

「簡単なのでいい」

トースター。

「でもパンは気分じゃない」

食洗機。

「俺のコップどこ?」

洗濯機。

「靴下どこ?」

テレビ。

「リモコンどこ?」

トイレの方から、

「紙なくなったよ」

夫は耳を塞いだ。

「やめろ!」

「どこ?」

「何?」

「どうする?」

「何食う?」

「どれ?」

「分からない」

「知らない」

「教えて」

「やって」

声が追いかけてくる。

夫は玄関まで逃げた。

ドアを開ける。

そこに妻が立っていた。

「助けてくれ!」

妻は首を傾げた。

「どうしたの?」

「家がおかしい!」

「そう?」

「全部、俺に聞いてくるんだ!」

「何を?」

「飯とか! 洗濯とか! 娘のこととか!」

妻は少し考えた。

それから、にっこり笑った。

「じゃあ最後に1つだけ」

「何?」

「今日の飯、どうする?」

夫の顔が絶望に染まった。

その瞬間。

家中の家電が一斉に叫んだ。

「自分で考えろ!」

白い光が夫を包んだ。

一瞬で姿が消える。

あとに残ったのは、

トイレットペーパーの芯が1本。

享年42歳。

死因――

自分で考えなかったため。

……

「……ひどい」

沙織さんは原稿から顔を上げた。

私は聞いた。

「お気に召しませんでしたか?」

「いえ」

肩が震えている。

「最高です」

笑っていた。

来店した時より、ずっと明るい。

「冷蔵庫のところ、もう1回読んでもいいですか?」

「どうぞ」

「『今日の飯どうする?』」

彼女はまた笑った。

私は受付票を取り出し、最後の欄を埋める。

受付番号:001

対象:夫

本日の罪状:妻への家庭内判断業務の丸投げ

常習性:常習

来店時の我慢度:★★☆☆☆

退店時の我慢度:★☆☆☆☆

選択コース:C

処理:完了

「処理完了って書くんですね」

「記録ですので」

「夫、生きてますけど」

「現実では」

沙織さんがまた笑った。

原稿をバッグへしまい、立ち上がる。

「ありがとうございました」

「こちらこそ」

ドアの前で彼女が振り返った。

「なんか……どうでもよくなりました」

私は頷いた。

それでいい。

殺さなければならないほど憎いわけではない。

離婚したいわけでもない。

ただ、ときどき。

原稿用紙の上で1回くらい死んでもらわないと、

明日も一緒に暮らせない。

「また必要になりましたら」

沙織さんが笑う。

「できれば来ないようにします」

「皆様そうおっしゃいます」

……

その夜。

沙織が家へ帰ると、誠はソファでテレビを見ていた。

「おかえり」

「ただいま」

「どこ行ってたの?」

「ちょっとね」

沙織はコートを脱ぐ。

「そういえばさ」

「うん」

「俺の充電器知らない?」

沙織の動きが止まった。

夫を見る。

ソファ。

クッション。

テーブル。

そして――

誠のお尻のすぐ横。

黒い充電器。

昨日までなら、

「そこにあるでしょ」

と言いながら取って渡していた。

今日は違う。

「自分で探して」

「え?」

「探してみて」

「いや、だからどこに――」

沙織は夫をじっと見る。

39度2分。

100人の男。

喋る冷蔵庫。

最後に残ったトイレットペーパーの芯。

思い出したら、笑いそうになった。

「ねえ、あなた」

「何?」

「今日、Cコースにしてよかった?」

誠が固まる。

「……何の話?」

「ううん。こっちの話」

「何それ。怖いんだけど」

沙織は笑いながら寝室へ向かった。

背後から声が飛んでくる。

「あ、今日の飯どうする?」

足が止まった。

振り返る。

誠を見る。

にっこり笑った。

「冷蔵庫にあるよ」

「何が?」

「食材」

「……で、何作るの?」

少し前までなら、ここで腹が立っていた。

でも今日は違う。

「自分で考えて」

寝室のドアを閉めた。

数秒後。

リビングから小さな声が聞こえた。

「……チャーハンでいいか」

沙織はベッドに倒れ込んだ。

声を殺して笑う。

まあ。

今日はこれでいい。

夫には、まだ死ななくてもらおう。

少なくとも――

次のCコースまでは。

……

翌朝。

午前10時3分。

店のベルが鳴った。

ドアを開けた若い女性は、片手にスマートフォンを握りしめていた。

ずいぶん、言いたいことがありそうな顔をしている。

私は新しい受付票へ手を伸ばした。

今日も営業開始だ。

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